第1章 犯人は僕です?いいえ、犯人は私です。【コテージ編】
罪悪感よりも、ある感情が私を支配したからだ。
「(……捕まりたく、ない。)」
「なぁ、クロサキちゃん…そういや昨日の夜、お前だけいなくなったよな」
カナザワの発言に、その場にいた全員が私を見た。
───1日目───
警察が来るまであと4日。
カナザワに疑いの目を向けられたすぐ後だった。
「待てってカナザワ、人に疑いをかけるより警察だろ」
「……………」
「俺が警察に電話しておく。みんなは一度、部屋に戻っていてくれ。夜にもう一度リビングに集まって今後のことについて会議しよう。話があるやつはその時にしてくれ」
アオキが冷静にあの場をおさめ、一度解散という形でそれぞれ自室に戻った。
旅行は当然中止になるはずが、この豪雨で土砂が崩れコテージまでの道が完全に塞がれてしまった。
がけ崩れの復旧には4日かかるらしい。警察もがけ崩れが復旧するまで来れないと言っている。
……警察が駆けつけるまで、あと4日。
「(夜の会議でカナザワは私を犯人だと言うつもりね。なんとか奴の口止めができないかしら…)」
裏工作【カナザワの秘密を暴け!】
「…そうよ。私の仕業だとバレなきゃいいのよね。ならやる事は決まってるわ。」
ニヤリと笑い、私はカナザワの部屋へと向かった。
「よう殺人鬼、何の用だ」
「随分な言い方ね」
もう犯人呼ばわり…
絶対にコイツの弱みを握る!
「事実だろ。お前がシラユキを殺した。」
「そのことで誤解を解きに来たのよ」
「聞きたくねぇな!俺ぁ見たんだよ!」
「見たって何を?」
「しらばっくれんな!お前が飲みの時にひとり抜けてくのをだよ!…シラユキ…っ、あぁくそがっ!!!」
カナザワ。こいつは会ったころから良い印象はなかった。“クロサキちゃん”と呼ぶ一方で影で私のことを“身体を使って男を誘惑するクソ女”だとか言っている。
もちろん、そんなのは嘘だ。確かに男にモテまくりだが、好きでもない男に身体を売る売女じゃないし、誘惑だってしてない。
「(…全部知ってんのよ。)」
短気で馬鹿だが、サークル部長であるアオキには調子を合わせている…金魚のフンそのもの。
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