第1章 犯人は僕です?いいえ、犯人は私です。【コテージ編】
「(もうスミレはダメね。やっぱり“ああいうタイプ”は自分勝手で困る。)」
私もスミレの部屋を出て、1階に下りる。するとトイレの前を通り掛かると声がした。
「最悪…」
「(この声…スミレ?…何かぶつぶつ言ってるみたいだけど…)」
「ちょっと、誰かそこにいんの?」
「私よ」
「…クロサキ…」
「急に部屋から出て行ったから心配したのよスミレ。それで…何か困ってるの?」
「ミドリ呼んできて」
「私じゃダメなのかしら?」
「アンタはダメ。信用できない」
「(言ってくれるわね…)」
何かトイレから出られない事情でもあるのだろう。でも私だってスミレの言うことを“タダ”で聞いてやる気はない。
「いいわ、ミドリを呼んできてあげる。ただし…条件があるわ」
「ハァ!?アンタね、自分の立場わかってんの!?」
「あらスミレ、そのセリフそっくりそのままお返しするわ。私は別にこのまま部屋に戻ってもいいのよ。…そうね、アオキに教えてあげてもいいかもしれない」
スミレがアオキに好意があることは知っている。聞きたくもないのに勝手に恋バナをされた。少しうんざりしていたところだ。
「きっと優しいアオキなら、助けてくれると思うわ」
「ミドリ以外に言ったら許さないから…」
「スミレ、私たち友達じゃない。友達に対してそんな言葉を向けるのは間違ってるわ。で、どうするの?」
私はトイレの前で腕を組み、スミレが落ちるのを待った。
「今朝の私の推理を内緒にしてくれるなら、話聞いてあげるけど?」
「…アンタと長いこと一緒にいるけど、そこまで性格がひん曲がってるとは思わなかった…!!」
「貴女だって似たようなものじゃない」
「……かった、わかったから!!」
「約束破ったら“紙切れトイレ立てこもり事件”、アオキに言うからね」
「………っ!……んとに性格悪いっ!!…約束するからミドリ呼んで!!!!」
「ええ、もちろんよ、スミレ。友達が困ってるんですもの、助けるのは当然だわ」
きっと扉の奥では悔しげに顔を歪めさせているスミレがいる。すっきりした私はミドリを呼ぶべく、3階に上がり、彼女の部屋を訪ねた。
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