第2章 紛い物の鬼
ドスッ、という音と共に突き刺さる刃。
重い刀とは違い、短く軽い懐剣だからこそ可能な手段だ。普通の人間は『投げる』などという発想すら皆無だろうが。
間髪を入れずに一足飛びに飛びかかり、懐剣を横に薙ぐ。
だが、次の瞬間目に飛び込んで来た光景に、ぞわりと鳥肌が立った。
抉った筈の左目が、懐剣が突き刺さった筈の肩が。
みるみるうちに治っていく。
(これじゃあまるで____)
咄嗟に、攻撃の手が止まった。
(鬼みたいじゃない!)
自らもその血をひく身であるからこそ、には信じられない現実だった。
鬼は血を求めない。無闇に刀を振り回したりもしない。一部例外はいるが。
(本当、何なの、この白い化け物……?)
混乱するに、容赦なく、鬼であるのかもわからない化け物は斬りかかった。