第2章 Destroy the castle of lust
「そういえば、なんでオマエはメメントスの存在を知ってるんだ?」
「スマホにあったんですよ、ほら」
見えるようにスマホの画面を見せた。カモシダ・パレスともう一つ、メメントスと書かれた行き先が書かれている。
「なるほどな。だから知ってたって訳か」
「渋谷にあることは知っていますが、入ったことはありません」
「ならちょうどいい。ワガハイが少し案内してやる」
「ええ。ありがとうございます」
メメントスという存在には少し興味がある。視察がてらよく観察しておこう。
「本日はとりあえずさわりだけでお願いします。あまり遅くに帰るのも嫌ですので」
「ああ。ワガハイもさっきので多少疲れてるしな。中に入って、説明だけしたら解散だ」
「はい」
渋谷の駅前でスマホのイセカイナビを開いた。相変わらず禍々しい見た目だが、使わない訳にもいかない。
「いきます」
「ああ」
メメントスと入力して案内を開始してもらうと、目の前がぐにゃりと歪む。何度やってもこの不快感には慣れなさそうだ。
「ここだ」
「限りなく不穏にした改札、という表現が正しいでしょうか」
「改札はここだけだ。奥は線路のようになっていて階層が変わるごとにそのフロアの姿が変わり、前のフロアに戻っても同じ姿にはならない」
「階層移動と同時にフロアが形成されているというような感じでしょうか」
「そこまで詳しくは分からないがな」
「そうですか…」
「一度下へ行ってみてもいいですか?とりあえず見るだけにしますので」
「分かった。行くぞ」
純粋にこの下がどうなっているのか気になった。線路になっていると言われたが、正直あまりイメージが湧かない。恐る恐るエスカレータを下ると、下の様子が見えてきた。
「なるほど。こんな感じだったんですね」
「分かったか?」
「ええ。ありがとうございます。戻りましょう」
メメントスを出て現実世界へ戻ってきた。メメントスへ行く前と変わらない人込みだ。
「そういえば、私に何か頼みたいことがあったんですよね」
「ああ。メメントスの最下層には、恐らくワガハイについての手掛かりが眠ってると踏んでる」
「あら、奇遇ですね。私もそう思ってました」
「なにっ⁉」
「私も、理由は伏せさせてほしいのですが、メメントスの最下層へ行きたいのです」
「利害は一致したな」
「ええ。協力させていただきます」