第2章 Destroy the castle of lust
翌日、昨日昼寝もしたお陰でぐっすりと眠ることができ、今日の体調は頗る快調であった。
「おはよう、天音ちゃん」
『おはようございます』
「今日はポニーテールなんだ」
『気分でしたので』
「似合ってるよ。かわいいね」
何とも言い慣れている感じがする。年はそう変わらないのに、女性の扱いも分かっていそうだ。
『ありがとうございます』
「じゃあ行こうか」
駅までそれ程時間もかからないのに、それでも態々監視の為に一緒に来るとは結構慎重派なのだろう。
「今日は放課後にテレビの収録があるんだ」
『連日大変そうですね』
「この前事件を解決したばかりだからね。凄く持ち上げられてる気がして怖いよ」
『意外でした』
「え?」
『明智さんにも怖いものがあるのですね』
「そりゃあ僕だってメディアに出ていること以外は普通の高校生だし」
メディアに出ている時点で全くもって普通の高校生ではないとは思う。
『ふふ、そうでしたね』
「な、何で笑うの?」
『何でもありません』
「気になるなあ」
ぐいと迫ってきて顔が近づく。
『先程の発言が少し面白かっただけですよ。それに、そんなに顔を近付けられては週刊誌にすっぱ抜かれかねません』
「そうかな?」
『そうです。困るのは私もそうですけどあ貴方もそうでしょう?』
「大丈夫だよ。僕はやましいことなんて何もしてないんだから」
少しだけ明智さんの瞳孔が開いているように見えた。この事が意味するのは、考えない方が良さそうだ。
「もう駅だね。じゃあ僕はこっちだから」
『はい。では失礼します』
明智さんと別れて、自分が乗る路線の電車に乗り込む。東京の朝はいつもこうだ。満員列車なんて当たり前。押し潰されるのは日常茶飯事。
「次は市ヶ谷〜市ヶ谷です」
学校の最寄駅のアナウンスが鳴ったので、読んでいた本をしまって待機した。1分くらい経つと駅に着き、主に恍星高校の生徒が吐き出される様に出てくる。私も負けじとなんとか駅のホームへ出た。あとは駅を出てまっすぐ学校へ向かうだけ。恍星の制服を着ている人達を追っていけば着くので、迷う心配もない。