第6章 4月12日 達郎の店
達郎は母の、年の離れた弟だ。
お互いに共働きの家庭で家が近所だった事もあり、達郎と小夜子もよく顔を合わせる様になる。
小夜子が小学生の時、達郎は既に高校生だった。
達っちゃん、達っちゃん、とまとわりついてくる彼女を、面倒見のいい達郎はよく可愛がった。
夏休みにはプールに夏祭り、週末にアニメに動物園。
それでも小夜子が成長していくに従い、達郎は疎遠になっていく。
小夜子の方はというと思春期に周りが色気づいてくるのもそっちのけで、そんな達郎に不満を持っていた。
いつもの調子で抱きつくと、彼は苦笑して彼女を窘める。
もう子供じゃないんだから、と。
子供じゃなくって、じゃあ女ならいいの?
そんな稚拙な考えだった。