第33章 2年後 社内、怜治のマンション
「何で、怜治が先に? ずるい!」
異動の話をし、一言目に小夜子が言った。
「狡いって………」
もう少し、何かないのか。
寂しいとか、そういうの。
自分の借りているマンションに小夜子を呼んだ怜治は心の中で頭を抱える。
予想はしていた反応。
仕事人間とは言わないまでも、男並みに小夜子には出世欲もある。
どちらかというと、仕事より小夜子優先になりがちな自分とは対照的で、何度かそれで彼女とぶつかった。
それが今回の評価に繋がったのも確かだろう。
「仕方ないだろ? 実力云々より、今総務には適材が居ないんだから、会社が小夜を離せないのは解ってんだろ?」
「に、しても」
「俺なんかより、来春は課長補佐とか言われてる癖に」
「どっかの公務員じゃあるまいし、うちの細かすぎる等級なんて興味無い」
とはいえ、赴任後は二段飛びとも三段飛びとも言われている。
怜治はそんな風にむくれる小夜子をなだめる。
なんで目の前のこの女は、いつまで経ってもこうなんだろう。
二年付き合っても、手に入れた感じがちっともしない。
こんな夜は、いつもより激しく彼女を抱く。
自分の存在を思い知らせるために。
聞き分けのない口を塞ぎ、熱くなるその肌に比例して、戸惑う瞳からも体液が溢れて流れ落ちるまで。
彼女はもう怖がらない。
怜治じゃなきゃ駄目だという。
触れてくれてないと嫌だという。
奥底ではもうそれを分かっていて、それでもまだこうしてしまう。
それで充分に伝わるのに。
抱かないと分からないのか。
けれど、どっちがだ?
「怜治……ね…中、に」
「……それは」
「お願い……欲しい、の。 全部」
いつの間に、同じ位に返して欲しいなんて思う様になったのか。
膨らんでくる欲望に一瞬躊躇し、小夜子が怜治の腰に脚を絡ませる。
「……小夜…出るっ、て」
彼女の内部がざわつくのに耐えられず、直前の激しい抽挿に、小夜子が口を開けて声に出さずに喘いだ。
「…ぁッ…あ!…熱…あつい……怜治…」
分からなくなる。
彼女の胎内を満たして、冷静になる前に働かない頭で。
無意識に、こぼれまいと小夜子の中に擦り付ける。
萎えても尚、深く重なりすっかりと彼女が嚥下するまで。
そうやって満たして、ようやく息をつく。