第33章 2年後 社内、怜治のマンション
年月が過ぎ、その春に、怜治に人事異動があった。
三ヶ月後の、アメリカへの海外赴任。
最低で、二年。
その栄転に周りは湧いたが、本人の心境は複雑だった。
金子が怜治の肩に腕を回してくる。
「こっちの事は心配すんな。 武井が充分フォローしてくれる」
意外にも、オールラウンダーを目指していた武井は実は怜治と同じタイプだったらしい。
より専門性を極め、難しいベンダーの資格等にも挑戦をして、怜治の後を追うように成長していった。
その分野の知識では二人に及ぶ物は居らず、それを生かすには今の長年の体制を変えざるを得ない。
いくら突出していても、うちはシステム会社では無い。
会社そのものの有り様を変える訳にはいかない。
それだから、一つ上の自分が今回の人事異動の対象になったのだろう。
だからといって、転職という選択は怜治の頭の中にはもはや無かった。
周りの人間と関わるにつれ、自分はまだまだ未熟だと思い知らされる。
部長を始め、この会社には多様で優秀な人間が多い。
それは変え難い魅力だと思っている。
彼の悩みの種は、専ら社内恋愛中である、恋人の小夜子の事。