第32章 6月11日 湊のマンション
弱々しく強請ってくる小夜子を優しく抱き締め、愛おしい女の名前を呼び続ける。
そのうちに強烈な窄まりが収まり、柔らかにこちらに吸い付くいつもの小夜子の体に戻っていった。
「小夜、まだいいか? 良過ぎて…止めたくない」
「うん、……離れないで。 抱いてて。 まだ凄く……気持ちいい、から」
「俺とすんの、そんなにいい?」
「ん……初めて…こんなになるの、怜治だけ……だよ」
小夜子の言葉にぞくりとした。
同時に彼女の中の自身が再び滾り、漏れそうになるのを堪えた。
「や、…っきく、……しない、で」
視界を奪われているせいで鋭敏にそれを感じ取り、濡れて慄く唇に丁寧に口付け、彼女の不自由な指に自分を絡める。
体を起こして小夜子の膝の上にキスをし、片脚を肩の上に乗せる。
横向きになっている彼女の下腹を支えている手のひらに、自身の動きが伝わってきた。
奥の深い所でまたひくひくと震えてくる小夜子の弱い箇所をじっくりと捏ね回す。
こんな体位のせいか、繋がっている所で擦れる彼女の肉芽も一緒に硬くなっているのが分かった。
再び何度も打ち震える体。
もしも自分が原因でこうなら仕方が無い。
何もかも自分に任せきった彼女がこんな風に快楽に没頭している。
嫌いになるなんて、馬鹿馬鹿しい。
「はっ…ぁあ……は…ぁん、ぁあ、ッん、ふ」
少し苦しげな、けれど今までで一番蕩けて甘い。
「……小夜。 いって、俺ので。 何度でも」
どちらで達しているのか。
それに構わず両方を押し潰して、畝る彼女の弾力を味わい続ける。
それなら、こうしてやるだけだ。
彼女の口から怖いとか、嫌って欲しくないとか、そんな言葉が出てこなくなるまで。
『怜治くん。 女って、花みたいなもの』
いつかの紀佳の言葉が頭を掠めた。
多分。
色んな花の種類がある。
小夜子には、小夜子の花。
その温度も、形や香りも、彼女だけの。
途中何度か戒めを外そうとしたが、怜治は結局そうしなかった。
紀佳みたいに快楽を求めてくるだけじゃなく、怜治が触れていないと、寂しがって不安そうになる小夜子が愛し過ぎた。
自分は、これからもこういう事を小夜子にしてしまうんだろう。
いくら彼女が自分だけにそうだと言っても。
ただ彼女を思い切り愛したいという身勝手な理由で。