第29章 6月6日 ホテルのバスルーム
怜治が小夜子の両膝の下に手を入れ、湯を掻き分けてそれを広げる。
「ちょっ……まだ…ん!」
この甘い痛みはもう何度目か。
どうやら私の初めての恋人はタフらしい。
肉食か草食かなんて、こないだ訊いた自分が馬鹿だった。
怜治は間違いなく前者だと思う。
「放っといたら可哀想だろ。 こんなグチョグチョなってんの」
耳許でそんな事を言われて顔が熱くなった。
私のせいじゃない。
でもそれもあるかも知れない。
あとお湯のせいで、今までよりも抵抗が弱い。
入ってる。
ゆらゆらと揺らされて。
緩やかな快感が微弱な電流の様に小夜子の体に広がってくる。
そして私の体もおかしい。
背中に彼の胸が当たる。
どうしても、声が出る。
今度は切なくて。
「……出たらまた体洗わないと」
彼が入ってくるたびに、体液が押し出される。
そしたら満たされて、呼吸をし始めるのだけど出て行こうとする時は寂しくて、かといってまた押し入ってくるその瞬間は息を呑む。
もう真夜中はとっくに過ぎたと思う。
ずっとこうしていたい。
「足んないな」
「ん………」
怜治の呟きに小夜子が微かに頷いた。
「良すぎて足んない。 家で独りでしても虚しくなるんだろうな」
「……じゃ、しないの?」
「絶対する」
まだするんだ。
小夜子が苦笑する。
「何、それ……週末に、また会おう?」
「勿論」
怜治が小夜子を抱く腕に力を込め、耳やうなじに何度も口付けてくる。
同時に、その動きも。
「あッ…激し……」
ぱしゃぱしゃと水面が揺れて、思わず体を竦める小夜子を抱き抱える様にして彼の質量が増した。
「うん……小夜、そこ手付いて」