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あなたが愛してくれたら【R18】

第28章 6月10日 湊のマンション


平日は大概シャワーで済ませているが、お湯につかりたくなり給湯の取っ手を回した。
もうもうと立ち上る湯気を見詰めているとあの時の事を思い出す。

あまりにも乱れてしまった自分に火を噴きそうで、急いで頭の隅に追いやる。


触れられる感触を思い出すだけで肌が焼ける。

なぜ怜治だとああなるのか。

男性との行為は、正直、似た様なものだと思っていた。
体や性格の相性云々は確かにあって、一時、週に一度は会っていた相手もいた。
けれどそうなると、お互いに傷付くだけだと早々に悟った。
そのうちに、体の結び付きと心を切り離す癖がついた。
そんな自分だから、途中で混乱して、怖くなる。


彼の肌の触感。
包み込む体の造り。
体を合わせるたびに溶けそうで。

彼の内面と同じに、優し過ぎて、激しい。

それは彼の父親のギャップを思わせた。


私がベッドの中で口走った「好き」。
それを怜治はどう思ったのだろう?

彼が何倍にでもして返してくれるそれに対して、自分の二文字は、付箋に書かれた落書きみたいな価値しかない様に思えた。

私はまだ彼に『借り』があり過ぎるというのに。
その前にセックスに溺れたくなんかない。


『小夜が本気で俺を欲しがんないなら意味が無い』


彼の不在。
体が乾く。

その一方で、酔ったみたいに満たされる心。
こんなものにどうやって折り合いをつけていけば?

いっそ逃げ出したくなる時がある。


浴槽の縁で組んだ腕に顎を乗せ、あの時と同じ水音を聴いているうちになぜか涙が出そうになった。


ねえ、怜治。
あなたを欲しいと言ったのは嘘じゃない。
けれど、あなたが言った、意味が無い、その『 意味 』が私にはまだ分からない。

もしそう伝えたら、あなたは今度こそ私に呆れてくれる?



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