第28章 6月10日 湊のマンション
週半ばの水曜日。
帰宅してからの時間は少し憂鬱だ。
仕事という枷が外れるとぷつりと途切れる。
憂鬱、といえば聞こえが悪い。
愛しい人の不在。
ただそれだけの事。
小夜子は当たり前にそれに慣れ過ぎている。
深く考えた事が無かった。
想いを返してくれる、それと、そうでない方の違い。
週末に、また怜治と会う約束をした。
金曜業後にある慰労会には少し顔を出す予定。
家に一旦戻り、達郎の店で待ち合わせをする。
翌日は一緒に怜治の新しい住まいをいくつか見に行こうと。
めぼしい不動産をいくつかピックアップしておいた。
『前日に飲みすぎない様にしないと』
『あんまり疲れ溜めないようにな』
『大丈夫。 店の帰りはうちに泊まる?』
『行く』
スマホを閉じてバスルームへと向かう。