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あなたが愛してくれたら【R18】

第21章 6月1日 高階家、社内


天気予報では週末も雨との事。


「梅雨ですからね……」

「せっかく新しく買ったワンピースおろそうと思ったのにな」

「出掛ける予定だったんですか? こんなお天気じゃ、ヒールも台無しですもんね」


お天気や洋服の事はさておき、怜治にはその場のノリでああ言ったものの、小夜子の気持ちは暗かった。

彼にこの期に及んで恋人の振りをしてもらう事。

気が進まない。

最初にそう望んだのはこちらなのに、今更とも思う。

またいつもの罪悪感だ。


怜治が一希みたいに、体の関係でもあれば少しはマシなのかな。
そんな事を思い付いた自分に吐き気がした。

彼は臆病でもお人好しでもない。

最初に彼があんな風に私を抱いたのは、きっと自分が愛情も無い癖に、相手には当然の様に優しさを求めてたのが、透けて見えたせい。
始終気圧されていたのは、私にそんな負い目があったから。


……まるで無銭飲食する客みたいだ。

精一杯もてなし創意を凝らして作られた料理を、食い散らかした挙句に、お金も払わず逃げ出す。

外のアーケードから、子供たちがふざけながら駆けて通り過ぎていく音がした。


結局私はあの頃から、何も変わってないのかも知れない。


スマホの着信があり、それを開く。
そういえば言い忘れたけど、と紀佳が大分回復した様だとの怜治からの報告だった。


『良かった』

『今朝の朝飯は俺が作った。 先生のお陰』


クスリと笑い、しばらく指をさ迷わせて送信を押した。

また私は同じ事をするつもり?

これ以上偽る事は出来なかった。



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