第21章 6月1日 高階家、社内
昼過ぎまで迷った挙句、結局怜治はスマホを開いた。
『週末、達郎さんから誘われた』
白々しく今週末の向こうの予定でも聞こうかとも思ったが、直球でいく事にした。
『ああ、ごめんね。 怜治くんも、って言われて誘おうかな、とも思ったんだけど。 単なる身内二人の外食だし詰まんないかなって』
「……………」
『気にしないけど、向こうは来ると思ってるっぽい』
『あれ? そういえば、達っちゃんに伝えるの忘れてた。 来る? そんなに悪くないよ、あのレストラン』
ボケが二人か。
怜治の嫌な予感が当たった。
小夜子はまだ達郎の事を知らない。
『暇だから行く』
そう打って、数秒経ってから送信した。
『うん、そう思う』
遠くを見る様な、あの時の彼女の横顔が頭から離れなかった。
結局、あれから雨が降り始めた。
窓に当たる雨粒やその隙間から、ぼやけた外の風景が目に入る。
あれが小夜子の本心であればいいと、怜治は願った。