第20章 5月26日 高階家
小夜子はそんな彼に対しいくつもの思いがあった。
その誠実さを好ましく感じる自分が、一番。
次に安心する自分。
引け目を感じる自分。
物足りないと感じる自分。
……理解出来ないと感じる自分。
今まで、男の愛の言葉は小夜子にとって、ケーキのデコレーションみたいなものだった。
無いと食指は落ちるとはいえ、こういっては身も蓋もないが、無くてもいい。
彼女の中ではいつも、変換式があった。
愛してる、は自己満足。
好き、は行為を求めるもの。
けれど、怜治に対し私はこれ以上何を望んでるんだろう?
たくさんの、花束みたいな想い。
彼と関わり始めて会う毎に、新しい花が推されてゆく。
『だから俺は受け入れてくるまで待つよ』
そのやり方が分からなかった。
そのせいで、彼に触れようとする度に躊躇する。
そうするには彼は眩し過ぎた。
愛してる、は自己満足。
好き、は行為を求めるもの。
私の口から発する言葉はきっと空に浮いて塵となり、後に残るのは積もった抜け殻。
そんな私に何を受け入れられる?