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あなたが愛してくれたら【R18】

第16章 5月15日 病院



「……私ね、泰さんの事、愛してるの」

「分かってる」

「ごめんね。 いっぱい甘えて」

「甘えられた記憶なんか無い」


もしそうならば、それで彼女は均整を保っていたのだろう。
そしてそれは、こちらも同じ。
寂しさを分け合って、冷えた体を温め合って。


「だから、大事にするね……」

「そうして欲しい」

「怜治くんの名前を…もらうつもり……」


彼女の瞼が重たげに降りていく。
しばらくしてまた穏やかな寝息が聞こえ、怜治が静かに診察室をあとにする。

紀佳はきっといい母親になりそうな気がする。


秘めた、道ならぬ恋だったが怜治に後悔はなかった。

先程小夜子に告白をして、もしも軽蔑されてたとしても、だ。


「………って」


ふと、ついさっきまで小夜子と座っていたソファが目に入った。

ちょっと、あれは性急すぎたかもしれない。
何が『 ゆっくりやれば 』なんだ。


今まで見た事ない、小夜子が泣くレアな状況に最初びびったが、止まらなかった。
塩辛い彼女の涙がまだ唇に残っていた。

ああいうので、彼女は泣くんだ。

けれど、彼女の為に泣いてくれる人間はいるんだろうか。

そう考えると複雑な気持ちになった。



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