第15章 5月9日 社内
連休が明けてそれから、どことなく怜治の様子が変わった事に小夜子が気付いた。
部長や金子に用事のついでにちらりと盗み見る彼は以前よりも穏やかに見えた。
前はいつもデスクに向かい、カリカリして近寄り難い雰囲気があった。
同じ課の人間と談笑していた怜治が小夜子の視線に気付き、会釈する。
つられて彼女もそうする。
たまにあるメッセージのやり取り。
それでもどこか一歩引いた感じの印象の彼。
達郎の店での事を蒸し返すことも無く、それは小夜子も同じだった。
考えた挙句、あれも彼の演技だったのだと思う事にした。
連休前の、達郎の店での事を思い返す。
恋人同士の帰り際のキス。
あれは中々に効果的だった。
やり過ぎだとも思えなくもない。