第12章 4月27日 会議室、社内
「ありがとう。 こちらも勉強不足でした」
「いえ。 いただいたご指摘事項につきまして、数日中におまとめして提出致します」
相手が数度満足気に頷き、COOに視線を投げた後に先を促す様、顔を進行役の方へ向けた。
向こうの出方は攻撃的では無かったから、一応こちらの水準を知っておきたかった、という事だろうか。
まどろっこしいが、もしかして、何かあるのかもしれない。
念のため小夜子は相手の顔と名前を頭に入れておいた。
にしても、怜治の対応は満点に近かった。
初めてのこんな場で、臆すること無く。
小夜子は心の中で彼に対し手を叩きたい気分だった。
これからの成長が楽しみである一方、転職を考えるかもしれない、と彼が話していた事も思い出す。
いくら彼の出来が良いとはいえ、その能力が生きるのは部長や金子、今井など、そんな周りのフォローがあってこそのものだ。
得られるものはまだまだある。
急くものではない。
転職するにも早過ぎる。
それを彼も今回の事で気付いてくれればいいのだけど。