第10章 想う
屋敷に戻り私は風呂に入る
汗をかいた身体をお湯で流した
今日は特に暑く感じた
それは不死川さんとの口付けのせいなのか
自身の唇に指を添える
「嫌じゃ、なかった...」
何故不死川さんがあんなことをしたのかとわからなかった
何故私も嫌じゃなかったのか
自身の気持ちがわからないでいた
ゆっくりお湯に浸かり考えるが
考えても答えはでない
風呂から上がり寝巻きに着替える
自室に戻り布団を引いた
うとうとと睡魔がやってくる
瞳を閉じると目の裏に映る不死川さんの顔
頭から離れない
気付いたら眠ってしまっていた
翌朝私は支度をして持ち場に着いた
昨夜任務に出ていた隊士が帰ってきたのだ
擦り傷の者が多かったのでケガの処置をして皆帰らせる
相変わらず炭治郎くんは目を覚さない
伊之助くんは先に目を覚ましていた
重症だったのに大人しくしないからしのぶに怒られているのをよく見かける
今日はもうとくにやることがないので外に出た
その足は自然と不死川邸へと向かっていた
いるかしら
門の前でそわそわしてると不死川さん自ら出てきた
「なにしてんだぁ」
「あ、不死川さん」
私が名前を呼ぶとピクリとする
あ、そうか
「実弥さん」
「なんだよ」
照れ臭そうにする不死川さんに私は笑いが出た
縁側に二人で座る
「昨日は眠れたか」
「えぇいつの間にか寝てしまってました」
「そりゃよかったな」
不死川さんは此方を見ない
私が顔を覗き込む
「実弥さん?」
「っ、なんだよ」
「どうしたんですか?」
「なにが...」
「落ち着きがないように思えます」
その言葉にぴくっとする不死川さん
「おまえは...昨日のこと、嫌じゃなかったのかよ」
昨日のこと
それはきっと口付けのことだろう
「私は、不思議と嫌ではなかったです」
「それは...俺のこと好いてくれてるのか」
好いている
私は考えた
勿論嫌いではない
誰彼構わず唇を許すわけでもない
不死川さんは特別だ
でもその気持ちがわからなかった
「私にとって実弥さんは特別です」
「俺はおまえに好意がある」
「そうだったんですか!?」
「そうだったんですかっておまえ...俺はなにも想わないやつにあんなことしねぇよ!」
不死川さんは乗り出して私を見つめる
「俺は高重が好きだ」
「っ、」