第10章 想う
追加で注文したおはぎを食べていたとき不死川さんの手が止まる
「おまえさ、今日任務あんのか?」
「いいえ」
「そうか...」
どうしたのだろう
小さくおはぎを食べる不死川さん
どこかそわそわしている
「あのよ、今日花火があがるらしいんだ」
「花火?季節ですもんね」
「見に行くか?」
「私と?」
「他に誰がいんだよ」
そうですよね
今私以外に貴方と話してるのはいませんよね
「いいですよ」
私が微笑むと不死川さんは最後の一口を頬張った
「じゃおまえ着替えてこいよ」
「え、でも夜だから鬼が出るかも」
「出たら俺が斬る」
「そんなわけには!」
「俺がおまえの浴衣姿見てぇんだよ」
不意打ちだ
そんなこと言われて頬を染まらせずにいられるわけがない
私はそれを隠すようにおはぎを一気に食べた
食べ終えた私たちは一度屋敷に戻った
戻った私は箪笥から浴衣を取り出す
丁寧に着付けをした
小指に紅をつけ唇に乗せる
ほんの少し色づく程度に
姿見にうつる自分を見て満足した
「喜んでくれるかしら」
不死川さんの顔を想像して自然と口角が上がった
夕刻 不死川邸へと向かっていると同じように浴衣姿の人たちが歩いていた
皆花火を見に行くのだろう
そんな楽しそうな人々を見ていると私も自然と足が軽くなった
不死川邸に着くと不死川さんはすでに門の前で待っていてくれた
「お待たせしました」
「あぁ」
私の姿を見た不死川さんは柔らかく笑う
「どうですか?」
袖の裾を少し握り両手を広げた
「綺麗だ」
素直に言った不死川さんに思わず胸が苦しくなる
「あ!ありがとうございます」
「行くか」
「はい...」
私たちは並んで歩いた
私の歩幅に合わせてくれる不死川さん