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想い人

第1章 あなたを想う


「あ、この店おはぎも置いてますよ!好きでしょおはぎ」
「...」
「知ってますよ?いつも甘い匂いさせてますもんね」
「〜〜っ」

なんとも言えない顔をしてる
それが面白い

「すいませーんおはぎ二つください」

大きな声で店員に注文をする

「なに勝手に頼んでんだぁ」
「食べないの?」
「...食うよ」
「ふふ」
「笑うな!」

そのやりとりが私は心地よかった

「不死川さんはご兄弟は?」
「いねぇ」
「嘘だぁ!この前弟だって子が来てましたよ」
「勝手に言ってるだけだ」
「ふーん」

仲が悪いのかなぁなんて思った
私には兄弟がいない
兄弟どころか両親もいない
孤児だ
胡蝶家に拾われてカナエさんとしのぶさんとは姉妹のように育った
でも、あの二人のように絆を繋ぐことはできなかった

私が一線引いていたのだ

親に捨てられ人を信じれない
拾ってくれた胡蝶家でさえ心を許すことができないでいた

私はいつも自分の気持ちを閉じ込める
笑顔で相手の様子を伺いそれとなく返事をする
いつも一つ間を開ける

それを知ってかしのぶさんも私と無理に距離を詰めてこようとはしない

「おまえは」
「はい?」
「兄弟は、いねぇのかよ」

初めて私に問いかけてくれた

「私は、孤児ですから」
「そーかい」

それ以上彼は何も聞いてこない

そうしてるうちに頼んだおはぎが運ばれてきた

「あ、粒餡だ」

パクリと食べれば頬が落ちそうになる

「美味しいですね」
「あぁ」

不死川さんは頬張りながら頷く

可愛い
そんな見た目しておいておはぎにかぶりつく姿はどこか幼かった

「粒餡派ですか?こし餡派ですか?」
「知るかよ」

もりもり食べておいて知るかよはないだろ

「そんなに美味しそうに食べてるのに」
「うるせぇ!お前早く食わねぇと食っちまうぞぉ」
「あー!だめですよ!それ私の!」

不死川さんが私のおはぎに手を伸ばそうとしてきたのを阻止する
そんな事をしていたら新しい客が入ってきた
冨岡さんだ

「あ」
「あ"ぁ?」
「高重、と不死川か」

心底嫌そうな顔をする不死川さんとすました顔の冨岡さん
すると冨岡さんは私の元へ来て

「この前高重に誘ってもらってここの蕎麦を食べてもう一度食べたくなってきた」
「そうなんですね!お気に召していたいただいてよかったです」
「はぁぁ?」

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