• テキストサイズ

想い人

第5章 苛立ち


「それは...言わなきゃいけねぇのかよ」
「言わないとわからないこともあります」

はぁと再びため息をする

「おまえが誰かれ構わずついて回るのが気になるんだよ」
「え?」
「誰にでもニコニコしやがって」
「八方美人とでも言いたげですね」
「似たようなもんだろぉ」
「まぁ」

私は心外だった

「好きでニコニコしてるわけじゃありませんよ。私だって怒る時はありますし、嫌なことは嫌と言います。ニコニコしてないとやってられないんですよ」
「?」
「捨てられないように、相手の機嫌伺って窮屈に生きてきた」
「... ...」
「捨てられるのが怖いから...」

私の意思とは反して涙が溢れ出る

「俺は捨てたりしねぇよ」

不死川さんは私に近付き涙を拭く

「俺だけじゃねぇ。胡蝶も、皆んな捨てたりなんかしねぇ」
「...っ、」
「今みたいに自分の気持ちちゃんと伝えろよ」

初めてこんなに自分の気持ちをぶつけた
ずっと一緒にいたしのぶさんにもカナエさんにも言えなかった

不死川さんには何故かぶつけられた

「俺にはぶつけられてんじゃねぇか」

よしよしと慰めるように優しく撫でてくれる

いつだったかカナエさんもそうしてくれた時があった

『みずきはもう少し自分の気持ちを相手にぶつけてもいいのよ』

「カナエ、ねぇさん...っ」

ポロポロと涙が流れてくる

居なくなってから初めてねぇさんと呼んだ
呼んでいいものか、呼んだら拒絶されるのではないかと怖かった

私は


臆病者だ
/ 79ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp