第5章 苛立ち
あれから冨岡さんにも不死川さんにも会っていない
「はぁ」
診察の合間に私は小さく息を吐く
コンコンと診察室の扉が音を鳴らす
「みずき今大丈夫?」
しのぶさんだ
「はい」
「なんだか元気がないようだけど大丈夫かしらとおもって」
しのぶさんはお茶を私の机に置いてくれた
「まぁ、元気がないわけじゃないんですけど...不死川さんがあまりにも勝手だから」
「あらあら、不死川さん?」
「私が冨岡さんと縁日に行ったのがよほど気に食わなかったらしくて」
「まぁ冨岡さんまで」
ひとつひとつに驚くしのぶさん
「不死川さんは嫉妬してるんじゃない?」
「私は不死川さんの所有物じゃありませんよ」
「そうだとしても、彼にとってはみずきが他の誰か...それも冨岡さんと一緒だったことに腹を立てているのでは」
うーんと唸る
「一度不死川さんとお話ししてみては?」
「...そうしてみます」
私は今日の診療をしのぶさんに任せて不死川邸へと向かった
思い立ったらすぐ
走って不死川さんのご自宅へと向かった
「ごめんくださーい」
暫くして不死川さんが出てきた
「んだよ」
「お話があります」
「話ぃ?」
目を見開いて私を見る
「まぁとりあえずここじゃなんだぁ。あがれぇ」
そう言われ屋敷内へと案内された
「話ったぁなんだぁ」
胡座をかいて凄む不死川さん
私はといえば正座をして前に少し離れたところに座る
「冨岡さんと縁日に行ったことがそんなに気に食わなかったですか」
「はぁぁ!?」
「嫉妬しているのですか?」
「んなぁッッッ」
微かに頬を染める不死川さん
「嫉妬っておめぇっ!」
「冨岡さんに誘われて行きましたが、それが煉獄さんだろうと不死川さんだろうと私はお断りしてませんでしたよ。先にお誘いがあったのが冨岡さんというだけであって」
頭をガシガシと掻く不死川さんはため息を吐いた
「悪りぃ大人気なかった」
「私は不死川さんの所有物ではありません」
「っ!?」
「私は誰のものでもありません」
ハッキリと意思を伝えたのはどのくらいぶりだろうか
「誰もおめぇを所有しようとは思ってねぇよ」
「でも不死川さんはあまりにも私が誰かと何をしているかなど気にされます」