第16章 再会
その言葉に驚いた杏寿郎は自分の体を見回して、目を見開いた笑みで明後日の方向を見て固まってしまった。
「フフッ、私も原理が分からないので初めは驚きました。歳を重ねた杏寿郎君も素敵ですが、私が一瞬で目を奪われた今のお姿は懐かしくて新鮮でドキドキします」
「うむ!で分からないのならば考えても仕方あるまい!それに今の君の笑顔が初めて目を奪われた時と同じなんだ、それだけで何とも満たされ幸せな気持ちになる」
魂だけの姿になっても天然の惚気合いは健在のようだ。
2人はニコニコと見つめ合った後、大切で大好きで尊い家族たちをもう一度ギュッと抱き締めてから立ち上がった。
「別れは惜しいが……そろそろ行こう。少し向こうでゆっくりしてから、輪廻の中に身を投じよう」
は惜別から溢れそうになる涙を押し込め、杏寿郎の胸元へとすっと身を委ねて笑顔で頷いた。
「はい。また会える日を楽しみに。杏寿郎君が隣りに居てくだされば寂しくありません」
この世から姿を消しゆく仲睦まじく寄り添う2人の姿は家族たちは見えない。
見えなかったが朱莉と紅寿郎の頭の中にはその姿が写ったように思え、同時に顔を互いに向け合い笑顔となった。