第16章 再会
すぐ近くで聞きなれたはずなのに懐かしい声が聞こえた。
杏寿郎は驚きそちらに顔を向けると、出会った頃の少女の姿のが後ろから腕を回し涙を流している顔が間近にあった。
「…… !会いたかった。迎えに来てくれたのか?」
「私もです。杏寿郎君にはもっともっと生きていただきたかったのですが……どうやらお時間のようです」
背後にあったの体を振り向いて抱き寄せ胸元におさめる。
懐かしい温かさ、懐かしい匂いが杏寿郎の胸を満たし、涙がじわりと滲んでいく。
「そうか。もう十分に……君が失わされた年数を俺が代わりに過ごさせてもらった。何も思い残すことはない、とても幸せな人生だった」
「感謝しております。私の分も家族と過ごしていただいて、これほど嬉しく幸せなことはありません。こうして触れられるのが久しぶりなので、少し気恥しいですね」
ひょこっと自分の胸元から顔を覗かせるを見ると、まるで数十年前に戻ったような感覚に見舞われる。
ふわりと綻ばせた頬は薄紅色に染まり、言葉の通り少し恥ずかしげなので思わず抱き締める力を強めた。
「喜んでもらえて安心した。家族と過ごしながらと再び触れ合う日を楽しみに生きてきたんだ、もう少しこのまま居させてくれ」