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月夜の欠片

第16章 再会


「父さん、姉さん!母さんの思い出話ですか?よろしければ俺も混ぜて下さい!」

と杏寿郎の2人目の子供、紅(こう)寿郎だった。

見た目や性格、声の大きさは杏寿郎の生き写しだ。
その中での面影を残すのは話し言葉……敬語であること。

「そうだ!今からに怒られた時の話をしようとしていた!紅寿郎もこっちに来て座りなさい。最後に少し話をしよう」

杏寿郎の静かながらも胸を締付ける言葉に2人は悲しみに顔を歪める。

「お父さん、最後って何?だって……こんなに元気じゃない」

「その通りです!滅多なことを言わないでください」

歩み寄り2人の側に腰を下ろした紅寿郎は杏寿郎の肩に手を置いて……体を震わせた。
紅寿郎はもちろん朱莉の杏寿郎への印象は明朗快活、鍛え上げられた逞しく頼りがいのある体躯だ。

そうだったはずなのに、今は自分より骨ばっている。

「元気であることに間違いはないが、俺はもうすぐにあっちへ旅立つ。何となく……分かるんだ。涙目で心配しながら見守ってくれているの気配を近くに感じる」

そう言って杏寿郎は腕を上にあげて何かに触れ撫でる仕草をした。

それはよく見た杏寿郎がの頬を撫でる仕草だった。
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