第16章 再会
「お父さん……お母さんがそこにいるの?」
「ん?あぁ。姿も見えないし温かさも感じ取れないが、間違いなくここにいる。そうだ、この子が俺に対して怒った話だったな。不死川の憂さ晴らしに付き合った際、互いに加減が出来ずからは喧嘩しているように見えたんだろう。喧嘩しないって言ったにも関わらず喧嘩するわ庭は荒らすわで、静かに怒りを露わにしていた。愛らしかったぞ」
そう言葉を紡ぐ杏寿郎の声音はどこまでも優しく、まるでに語りかけているように2人には見えた。
しかしそんな杏寿郎の呼吸は浅く、元気だと言っていたのに本当のところは芳しくないのだろう。
「父さん、今日はもう休もう。母さんも待っててくれる……元気になったら」
「いや、少しでも長く朱莉と紅寿郎と同じ時間を過ごさせてくれないか。最期の時間、君たちが繋いでくれた尊い命……孫たちの演武を見て過ごさせてほしい。本当は君たちの舞う姿を見たかったのだが……君たちも若くないからな!」
もそうだったが杏寿郎も人を悲しませる嘘をつくような人間ではない。
だからこそもうすぐ杏寿郎の寿命が尽きてしまうのだと2人に悲しい確信をもたらした。