第15章 理由
髪を撫でていた手が肩に当てられ、そこから炎のような瞳と同じ温かさが全身を巡る。
それがの体の強張りを解し肩の力がストンと落ちた。
「はい!まだまだ長いこれからの人生、今までと同じように仲良く隣りを歩ませて……」
言葉の途中で笑顔から眉間に皺を寄せて思案顔となった。
杏寿郎からすればいいお返事が貰えそうだったのに突然考え込み出されたので、眉をへにょんと下げながら指での顎を掬い上げた。
「俺と仲良く歩むことに不安でもあるのか?今更逃げ出そうとしても手放してやれないぞ」
「あ、いえ……そうではっ!杏寿郎君、お顔が近いです!恥ずかしいです!」
まるでいつまで目を閉じずにいられるかと試すように間近で見つめられるものだから、は真っ赤になった顔を隠すために両手で覆おうと両手を動かすも大きな手で手首を拘束されそれも叶わない。
「そうではないとすれば何だ?あんな所で言葉を止められてしまえば拘束したくもなると思わないか?」
「す、すみません。あの……杏寿郎君を好きな気持ちが年々増す一方なので、今まで以上に仲良く歩ませて下さい……と言い直そうとしていました」