第15章 理由
まさかの予想の遥か上を行く更なる喜ばしいお返事に、杏寿郎は目を皿のようにした後に頬をほんのり赤らめた。
「よもや。君は……いつまでも出会った頃と変わらず愛らしくて困るな。もちろんだ、これまで以上に仲良く頼む」
「愛らしいなんて……えっと、手が動かせないのですが……この体勢はとても……その、刺激が強過ぎて恥ずかしいです」
杏寿郎の手の拘束から逃れようともぞもぞと体を動かすも、痛くはない強さなのにしっかり固定されていて一向に外れる気配がない。
「ふむ、刺激が強いと。俺から見ると今のは猛獣に狙われ身動きが取れない小動物のようで、何とも唆られる姿に映っている。しかし恐怖を植え付けるわけにはいかない、布団に移動しようか」
正しく獲物を狙う猛獣のような表情をしていた杏寿郎だったが、そろそろが倒れそうなほどに全身に熱を帯びさせたので、ふわりと微笑んで硬直している体を抱き上げ布団へと寝かせた。
「何年経っても初心な君の反応を見るとつい構いたくなってしまうな!」
「それは杏寿郎君が格好いいからです。あの……不躾なお願いがありまして……肌を合わせていただきたい……です」
思いもよらない珍しいのお願いに杏寿郎は満面の笑みとなり、キュッとしがみついて来ている背に腕を回す。
「君にとって俺が格好いいのならば喜ばしい限りだ!それにしても……それが俺にとって不躾な願いなどである訳がないだろう?が思っているより遥かに嬉しい願いだ」
願いを喜んで受け入れてくれた杏寿郎の顔を見上げると、の唇に温かく柔らかなものが重ね合わされた。