第15章 理由
抱き上げられ空中でぷらぷら揺れるは満面の笑みを向けてくれている杏寿郎の頬を両手で包み込み、僅かに瞳に涙を滲ませながら笑顔で頷き言葉の続きを待った。
「確かにの寿命のことを考えると胸が軋む!でもそれは君の事がどうしようもなく愛おしくて仕方ないからだ!君の言葉が枷だなんて思ったことは1度たりともない。こうして触れてもらえれば不思議なことに痛みも癒える」
杏寿郎はの体を下ろし、さらりと背に流れる髪をゆっくりと撫でる。
「まだまだ80年もある!その長い年月もやはり俺は君と笑顔で過ごしたい。約束関係なくの側にいるだけで自然と笑顔になれるんだ。だからどうかひっそり自分を責めないでくれ」
と目線が合うように屈むと、変わらず柘榴石のように深い赫の瞳は涙の膜で覆われながらも先ほどと同じく笑顔が浮かんでいた。
「私が杏寿郎君を包み込もうと思っていたのに、結局私が包み込まれて癒されちゃいました。まだまだ杏寿郎君の背中には追いつけそうにありませんね」
「元師範としての矜恃があるからな!だが君は俺と違った強さを持っている。追いつく必要はない、元柱として肩を並べ共に闘った時のように、共に助け合いながら肩を並べていこう!」