第15章 理由
その言葉に1番に反応したのは杏寿郎で、抱き締めてくれているの背に自分の腕を回した。
「ではここぞとばかりに甘えさせてもらおう!君たちも遅れを取るとお父さんにお母さんを独り占めにされてしまうぞ!さぁ!」
なぜか抱きつくことを促された朱莉と紅寿郎は何の疑問も感じることなく、促されるままの体に抱きつきに行った。
「お母さん、私に出来ることがあったら何でも言ってね。お料理も出来るようになったから、お母さんがお仕事の間に作ったりも出来るからね!」
「じゃあ……じゃあ僕はお姉ちゃんのお手伝いする!」
なんとも親想いの子供たちに笑顔を零し、は杏寿郎ごと子供たちを抱き締め返した。
「ありがとうございます。ではお料理はお願いしましょうか。でも私の一番の幸せはあなた達が元気に笑顔で過ごしてくださることです。優しいあなた達が幸せな未来を歩んでくだされば、何も望むことはありません」
優しいの声音に杏寿郎は決戦時以来の涙を人知れず流した。
それに気付いたのはだけ。
暫くの間、4人はこのままの温かな時間を過ごした。