第15章 理由
「そこで君が泣いてしまうのか?!ほら、泣き止んでくれ。紅寿郎も驚いて今にも泣いてしまいそうだぞ」
何がどうなってや朱莉が涙を流しているのか理解出来ない紅寿郎はただその雰囲気に飲まれ、オロオロしながら涙を瞳に滲ませていた。
「え、あ!すみません!紅寿郎君、大丈夫ですよ!これは今の幸せを噛み締めた涙ですからね!さて、朱莉ちゃん。お母さんは本当に8年寿命縮んだの?って皆さんが思うくらい長生きするって決めてます!えっと、確かあと80年は生きると言うお話でしたよね?」
「ハハッ、そうだったな!110歳まで生きると言っていたので、あと80年だ!朱莉や紅寿郎も頑張ってくれ!ちなみにお父さんはあと81年は生きる予定だからな!」
この時代でその年齢まで生きた人はいないし、きっと医療が進むであろう未来でも生きられる人はごく僅かだろう。
それでも2人が冗談や慰めで言っていないことはその表情や声音から感じ取れた。
「まだまだ杏寿郎君や朱莉ちゃん、紅寿郎君と過ごせる時間はたくさんです。それでも悲しくなる時があると思いますので、その時は私に甘えに来てください。悲しみが癒えるまでこうして皆さんを抱き締めますから」