第14章 誰が2番?
「朱莉、お母さんの体にあるたくさんの傷が気になったのだろう?」
電気の点った道場内。
向かい合って杏寿郎を見つめる朱莉の瞳の色は自分とそっくりだ。
その瞳には未だに疑問の色が浮かんでいる。
朱莉が見ていたのは傷痕1つない杏寿郎の体と、大小様々な傷痕が至る所にあるの体だった。
両親共に鬼を退治していたと教えて貰っているのでそれは朱莉も知るところである。
だがその2人の体が対照的で疑問が浮かび上がったのだ。
「うん。どうしてかなって」
「お母さんの前で聞かないでくれた君の優しさを父は嬉しく思う。さて、どこから話そうか」
朱莉を脚の上に座らせ杏寿郎は幼い娘にかつてが有していた治癒能力のことを話し出した。
自分はおろか他の者の傷も癒せたこと、任務のみならず最終決戦で多くの命を救ったこと。
そして最終的に自分の傷には見向きもせずに鬼舞辻と闘う者の傷を全て癒し、古傷まで癒しきったことを。
「お母さんは自分の傷を治す前に力を失ってしまった。俺たちの傷を癒し続けてくれたから、この体にも仲間たちの体にも傷痕1つないのだ。不死川の体など古傷だらけだったのに、今ではそれすら見当たらんだろう?朱莉の母は強く優しい。俺にとって妻が誇りであるように、朱莉にとっても母が誇りになればいいと思っている」