第14章 誰が2番?
長く難しい話を全ては理解出来ない。
それでも自分の母が父や仲間たちを大切に想い、何より優先して痛みを取り除いたのだと言うことは理解出来た。
それと自分を抱き締める父の優しくも温かな腕や声音が震えており、幼いながらも今はこれ以上のことを聞くべきではないと分かった。
「じゃあお母さんの傷は強くて優しいしょうこだね!むずかしくて上手に言えないけど、私はお父さんもお母さんも大好き」
まるで杏寿郎の震えをおさめようとするかのように抱き着いてきた朱莉の体はとても温かく、強ばり震えていた体が解れ心も温かく満たされていった。
「そうか、そうかっ!お父さんもお母さんも朱莉が大好きだ!どれ、久しぶりに高い高いをしてやろう!夕餉までの腹ごなしだ!」
「ほんとう?!じゃあお庭に出よう!お屋根より上に高い高いして!」
通常の家庭ならばとんでもない子供の願いも杏寿郎にかかれば容易く叶えてしまえる。
もちろん杏寿郎は大きく頷き、満面の笑みで腕の中にいる朱莉を抱いたまま庭へと移動して脇の下に手を差し入れた。
「ほら、いくぞ!高い高ーいっ!」
楽しそうな2人の声に導かれが居間に続く縁側から顔を覗かせると同時に、顔を真っ青にしながら足を踏ん張って跳躍し、空中ではしゃいでいた朱莉を見事腕の中におさめた。
「た、高い高いとはこのような遊びでしたでしょうか?!……私もしてみたい……い、いえ!あ、あれ、杏寿郎君?ほんの冗……談っ?!」
この日、楽しそうに宙を舞うと朱莉の姿がご近所さんたちに目撃されたらしい。