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月夜の欠片

第12章 好きなもの


かと言っては花言葉に詳しくなく……杏寿郎も生前の母親に教えてもらったものしか知らないので知識に明るくない。
考えてもすぐに思い浮かばず2人して頭を必死に捻る。

「花言葉は女子らしくて名前に入れるのは賛成だ!しかし……名前の音はどのようなものがいいだろうか?そこから考えてもいいかもしれんぞ?『しゅ』と読むか『あか』と読ませるか」

「それはもちろん『あか』です!」

間髪入れず答え杏寿郎を見上げるの表情は真剣でありながら、興奮気味に頬を紅潮させていた。

それは言わずもがな、2人の瞳の色をと杏寿郎が希望したからである。
2人の瞳の色は色が違えど『あか』だからだ。

「そうだな!俺との共通点は必ず入れよう。それにしても名前を考えるのは難しいが、赤子への初めての贈り物だと思うと気合いが入るな。ゆっくり考えたいので……そこの甘味処に入ろう!甘いものを食べながら考えればいい名前が思い浮かぶかもしれん!」

自分の希望を叶えようとするに満面の笑みを浮かべた後、少し先にある甘味処に視線を移した。
その視線に促されるようにも視線をそちらへ動かし……いつの日か芋羊羹を初めて食べた時のように輝かんばかりの表情へと変化させた。
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