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月夜の欠片

第12章 好きなもの


普段食事を取っている時にはお行儀よく器用に次々と口に運んでいるので、あの時は稀に起こる事故のようなものだったのだろう。
後にも先にも頬につけていたのはそれだけなので、これだけ警戒していては同じ姿を見ることは叶わないはずだ。

「それは残念だ。幼子のようで愛らしかったのでまた見たかったのだがな」

「えっと……そ、そうです!この子も私たちと似てたくさんご飯食べてくれそうですよね!作り甲斐があります!」

恥ずかしさを紛らわせるための急な話題転換に吹き出しそうになりながらも、あまり構いすぎては走って逃げてしまいそうなので小さく笑ってすませた。

「あぁ!間違いなくよく食べるだろうな!よく食べ健やかに育ってくれれば何も望まない。そうだ、名前なのだが……君の瞳の色と俺の瞳の色を入れたいと思っている。朱色の朱はどうだろうか?柔らかな優しい色。皆を温かな優しさで包み込み、温かい優しさで包み込まれますように……と」

「それは何より私たちがこの子に望むものですね。ぜひ朱を入れましょう!あとは……杏寿郎君がよく私の着物に願いを込めて素敵な花言葉を送ってくださったので、素敵な花言葉を持つお花の1文字を赤ちゃんに送りたいです」
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