第12章 好きなもの
「どうだった?退屈ではなかったか?」
「退屈だなんて!すごく楽しませていただきました!あのように詩や音楽、舞だけで物語を表現出来るものなのですね!また観に行きたいくらいです」
今日見た能楽が脳内で巡らされているのだろう、の表情はうっとりとしており杏寿郎はホッと息を着いて少し不安げだったそれはニコと笑顔になった。
「それならば良かった!もちろんまた一緒に観に行こう!その前に今度はの好きなものを食べに行かなくてはな!生くりぃむを近辺で提供している甘味処を探してみるとするか!確かに甘くて美味かった記憶があるぞ!」
そしてうっとりした表情から一変。
過去の記憶が唐突に蘇ってきての頬が赤く染まった。
もちろん杏寿郎はがどうしてそうなったのかを理解している。
過去に自分がの頬についた生くりぃむを舐めとったことを思い起こしているからこその今のの表情だと思うと、ついつい構いたくなってしまう。
「また君が頬につけた時にはとってやるから気にせず存分に食べるといい。前と同じ方法でな!」
「まっ……前と同じですか?!それは恥ずかしいので……落ち着いて食べるようにします」