第12章 好きなもの
「それでは女の子のお名前を考えなくてはなりませんね!それにしてももう言葉が分かるだなんて聡い赤ちゃんです!杏寿郎君に似たのでしょう」
そう言って赤子の名前を真剣な顔で思案し始め、ポツポツと女子らしい名前を呟き出した。
突拍子のない話を全く疑いもせず信じ、あまつさえ自分をさり気なく自然に褒めてくれたに杏寿郎は笑みを深め頬を撫でる。
「それを言うならば元気で正直者なところは君に似たのだろう。きっとに似て愛らしい子に違いない!ところで、体調はどうだ?」
「フフッ、私に似てしまえば杏寿郎君の心配が2倍になってしまいますよ?体調は変わらずすこぶる宜しいです!むしろ杏寿郎君の寝顔や赤ちゃんの動きでいつもより元気になりました!」
間違いなく心配事が増えるであろう杏寿郎はピキリと体を硬直させたが、嘘偽りのない元気で実年齢より幼く見えるの笑顔に体の力は次第に解れていった。
「元気であれば俺は何も望まない!親が子の心配をするのは自然な事だからな!そして今日も元気な、よければ能楽を一緒に観に行かないか?」
能楽。
もちろんは観たことがなく、それがどんなものなのかを把握していない。
故に杏寿郎が予想した通りキョトンと目を瞬かせていた。