第12章 好きなもの
ポコン
と小さな小さな振動が2人の手に伝わった。
それと同時に2人は目を見開きながら見つめ合い、次第にその頬は興奮と嬉しさから赤く染っていく。
「今……今、赤子が動いた!君も感じたか?!」
「はい!お腹がポコッと動きました!赤ちゃん、元気に育ってくれていますね!」
杏寿郎は笑顔で頷いた後、もぞもぞと体を布団の中に移動させてのお腹にピタリと頬を当てた。
そしてまるでお腹の子を驚かせないかのように小さな声で語りかける。
「まだ君の名前は決まっていないのだ。男子だろうか?……ふむ、それとも女子だろうか?」
ポコン
「?!そうか!君は女子か!少し待っていてくれ!」
興奮から僅かに大きな声になった杏寿郎に驚いたのか、の体がピクリと跳ねる。
あまりの嬉しさからそれに気付かず先ほどはゆっくりと移動した杏寿郎だったが、今度はスポンッと布団の中から飛び出しをギュッと抱きしめた。
「!お腹の子は女子だぞ!問いかけると返事をしてくれたのだ!」
胸の中で温かさに包まれながらは嬉しそうな杏寿郎の顔を見上げ、そしてその笑顔に顔をほころばせた。