第12章 好きなもの
「それはそれは可愛らしい笑顔でしたよ。まるで起きていらっしゃるような笑顔で身悶えちゃいました」
夢も現実も笑顔。
2人にとって何とも幸せな1日の始まりである。
「そうか!が喜んでくれたのなら何よりだ!……苦しくはないか?お腹も随分大きくなってきたからな」
背に回していた手をスルスルとのお腹へ移動させ、少し膨らんできたお腹を優しく撫でた。
その手の温かさに幸せを感じながらはその手の上に自分の手を重ね合わせる。
「苦しくありませんよ。すごく心地良くて幸せな気持ちです。もう5か月になりましたから、そろそろ赤ちゃんが動き出すかもしれませんよ?しのぶさんが教えてくださいました」
何もかもが初めてな2人はお腹の中の子の成長を楽しみに日々の生活を送っていた。
そんな中でしのぶが教えてくれたのが胎動。
「そうなのか?!千寿郎が母上のお腹の中にいる時に触れさせてもらったことがあるが……あれは感動するぞ!そうか、今度は俺の子でその幸せを噛み締めさせてもらえるのだな」
「幸せな思い出です!杏寿郎君の手の温かさを千寿郎君も感じ取れたに違いありません。きっとこの子も杏寿郎君の手の優しい温かさを……」