第12章 好きなもの
剣術道場が休みの朝、が目を覚ますと杏寿郎はまだ眠りについたままであった。
楽しい夢を見ているのか、その表情はにこやかでまるで起きているかのようだ。
(お久しぶりの杏寿郎君の寝顔!可愛らしいです!どんな夢を見られているのでしょう?こんなに笑顔で)
起こしてしまわないよう心の中で身悶えていると杏寿郎から小さな呟きが聞こえてきた。
(??起きていらっしゃる?んー……でも目が開いていない……)
「わっしょいっ!」
「っ?!」
大きな掛け声とともに炎のような暖かな瞳がお目見えした。
突然の掛け声と眼力にさすがのも驚き体をビクッと震わせ、体を硬直させている。
「む?焼き芋を食べる夢を見ていた!驚かせてすまない!おはよう、」
「おはようございます、杏寿郎君。素敵なお目覚めですね。私も杏寿郎君の可愛らしい寝顔を見られたので素敵な朝を迎えられました」
もぞもぞと杏寿郎の胸の中へ擦り寄り顔を埋める。
杏寿郎もそれを待っていたかのように胸の中にやってきたを更に抱き寄せ、その体の温かさに一心地ついた。
「ハハッ、俺はどんな寝顔をしていた?夢の中では君と笑顔で焼き芋を食べていたのだが」