第11章 お披露目
「杏寿郎君、先ほどは聞きそびれてしまい申し訳ありません。何か言いかけておられましたよね?」
今は槙寿郎や千寿郎への報告を終えてゆっくりと自分たちの屋敷へと帰っている途中である。
……なぜか数人の元柱が待っている自分たちの屋敷へと。
「ん?あぁ、構わない。言いかけていたのは……煉獄家では妊娠すると7日ごとに一刻の間、庭で観篝と言って大篝火を見るという風習がある。この髪やこの瞳の色はそれの影響らしい!不思議なことに男の子供しかこうはならんとの話だ!しかし君を見ていると無理をさせるのはどうかと思ってだな……辛いならば無理にする必要はない」
杏寿郎の気遣いに顔を綻ばせ繋いでいる手をキュッと握り締め直した。
「ありがとうございます。でも私はこの通り元気ですよ!代々続けてこられた伝統あるものならば、煉獄家の妻としてそのお役目を全うさせて頂きたく思います。それに私は杏寿郎君の髪や瞳が大好きです!赤ちゃんに受け継がれたら嬉しい」
「そうか!にそう言ってもらえると俺も嬉しい!しかし途中で辛くなれば続けなくて構わないからな!君の命があってこその赤子だ。ほら、もう少しこっちに寄ってくれ。転んでは大変だ」
繋いだ手をクイと引っ張られたの体は杏寿郎の体にピタリとくっつき、ほんの少し肌寒さの残る外気すら気にならないほどの温かさに包まれた。