第11章 お披露目
「冨岡様も本当にお優しいですね。これで演武を滞りなく何の心配もせずに舞うことが出来ます。ありがとうございます!」
礼を述べると早速は稽古の時と同じように顔へと手拭いを持っていくが、それは強い力で引き止められる。
「待って!ちゃん、今お化粧してるのに顔を拭いたら全部取れちゃうから!これはこうして額に当てるだけの方がいいよ」
3人の喧騒が響く中、それを意に介さない無一郎の静かで優しい声音と行動によりの額には心地良い冷たさに見舞われる。
「気持ちいいです。このまま眠ってしまいそうなほど……そう言えば最近眠気にもよく襲われるんですよね。やはり鬼殺隊時代よりほのぼのと過ごしているから気が緩んでいるのでしょうか?」
それであるならば喜ばしいことである。
過酷な人生を歩んでいたが心穏やかに過ごせているのは、この場にいる全員にとって願ってもない事だからだ。
しかしここに表情が強ばった人物が1人。
「ちゃん、ちょっと聞きたいことが……」
「!どうも諍いがおさまりそうにないので先に俺たちが舞うことになりそうだ!準備をしておくぞ!」
杏寿郎の声に反応してが辺りを見回すと、いつの間にか元柱を含め杏寿郎の元継子たちや、それぞれの呼吸の剣士たちが集結していた。
「あ、はい!かしこまりました!しのぶさん、申し訳ございません。演武が終わり次第お伺いさせていただきますね」
ぺこりと頭を下げて元気に走りゆく背中をしのぶは引き止めることが出来なかった。
聞きたかったことが聞にくい内容だったから……