第11章 お披露目
ふわりとした笑顔は相変わらず。
その笑顔に対する胸の痛みはここ最近で随分と和らぎ、緩く笑みを返した。
「そうかよォ……てか努力してる奴を笑えるほど俺は出来た人間じゃないんでなァ。それよりお前、熱あんだろ?あんま無理すんな……おォい、宇髄。言いてぇことあんならさっさと言えやァ!」
「前にも言ったよなぁ……てめぇ、俺を差し置いて姫さんから兄貴の座を掠めとんじゃねぇよ!姫さんの兄貴は俺が1人目ってこと忘れんな!」
本人たちにとっては重要な話しなのだろう。
もちろんにとっても内容自体は嬉しいことなのだが、それで諍いが起こってしまってはしょんぼりになってしまう。
「こら、2人共やめないか!が胸を痛めているぞ!」
悲しげな表情のにいち早く気付いた杏寿郎は二人の間に割って入り、の周りにはしのぶを始めとして義勇と無一郎も集まってきた。
「これを」
熱があると聞いて咄嗟に用意してくれたのか、義勇が濡れた手拭いを差し出してくれる。
言葉足らずなど気にもならないくらいその心遣いはの胸の中をほんのりと暖かくし、悲しげだった表情は穏やかな笑みを取り戻した。