第11章 お披露目
無意識の惚気に天元は呆れ気味に溜め息を漏らし、2人の成り行きを生暖かく見守ることにしたようだ。
その間ももちろん惚気は続いており、やっと終わったと思った頃には杏寿郎がを胸元に隠してしまっていた。
「心配だな……君がその衣装で舞う姿はさぞかし愛らしいのだろうが、僅かであっても熱がある今の状況は素直に楽しみとは言えない。念の為胡蝶が到着次第伝えておくので、気分が悪くなればすぐに言ってくれ。倒れてしまっては事だ」
鬼がいなくなったと言えど人はいつしか寿命が尽きる。
理不尽に命を奪われなくてもそれを全うすれば天へと旅立つ……特には8年もの命を縮められているので、杏寿郎の心配は尽きないのだ。
「ご心配ありがとうございます。でも私は大丈夫ですよ、私はまだまだ杏寿郎君を含め天元君や皆さんとしたい事が沢山ありますので」
そう言ってはどうにか顔を杏寿郎の胸元からピョコと出し、未だに心配そうに眉をひそめている2人を穏やかな笑顔で交互に見遣った。
「今日の舞もその1つです。杏寿郎君と舞うのをすごく楽しみにしていましたし、天元君の時間に余裕があるならば全て終わり次第、私と舞ってほしいと思っておりますので」