第11章 お披露目
2人が不毛なやり取りを行っている頃、は1人ぼっちで宛てがわれた部屋にて着替えを進めていた。
「杏寿郎君や天元君と着替えたい……とはさすがに申しませんが、1人は少し寂しい。しのぶさんや蜜璃ちゃん、カナヲさんとご一緒したかったな……お話しに夢中で着替えるのを忘れてしまいそうですが」
眉をハの字にして寂しさを全開にしているはお館様からいただいた着物へと装いを変えており、残すは裾を留め具で止めるだけである。
「私の日輪刀の鍔と同じ形です。という事は杏寿郎君は炎の形になりますね!きっと……いえ、すごく似合っている姿しか目に浮かびません!早く見たいな……そうと決まればお迎えに上がりましょう!……それにしても少し体が火照ってるような気がします。……噂の風邪でしょうか?!」
大きな独り言を口に出しながら杏寿郎たちを迎えに行こうと勢いよく襖を開けると、の視界は真っ白な何かに覆われてしまった。
「あ……れ?熱でもある?」
「熱があるのか?!」
聞きなれた今から迎えに行こうとしていた人の声が聞こえ、は満面の笑みを浮かべて声の主を見上げる。
そこにいたのは姿を見たいと思っていた杏寿郎と、共に着替えを行っていた天元が心配げな表情で佇んでいた。