第10章 ※湯けむり旅情
いざ部屋に戻るとやはりはどうすればいいか戸惑うようで、食後に宿の人が敷いてくれた布団の上に座り帯を解こうかどうしようかと手をさ迷わせている。
その様子を眺めていた杏寿郎は小さく笑い、さ迷っている手を引いての体を自分に寄せた。
「フフッ、今日は俺が脱がせるからこっちへおいで。まだ目が慣れていないので、この暗さだとあまり見えないから安心してくれ」
杏寿郎は恥ずかしがるの為に肌を合わせる時は部屋を暗くしてくれている。
今も少し離れれば互いの姿がはっきりと分からないほどの暗さで、その気遣いに気付いているは笑みを浮かべて引かれたまま杏寿郎の腕の中に身を滑らせた。
「いつもありがとうございます。そのうち、杏寿郎君のお顔やお体を認識できる明るさで肌を合わせたい……です。見蕩れちゃってそれどころではなくなるかもしれませんが」
ジッとが身を委ねている間に帯や浴衣はスルスルと解かれ、気が付けば腰巻き1枚を身につけているだけとなった。
その体を抱き寄せたまま杏寿郎も浴衣を脱ぎ去り、直に互いの体温を肌で感じられた心地好さから2人してホッと息をついた。
「無理はしなくて構わない。しかし……きっとはその時にそれどころでなくなっても、すぐに乱れてくれると思うぞ?どこも敏感に反応してくれるからな」