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月夜の欠片

第10章 ※湯けむり旅情


「本当に君は俺が喜ぶ言葉を言ってくれてる。幸せなのは君だけでなく俺も一緒だ、こうして抱きしめられる距離にがいて体を預けてくれるのがどれほど幸せか……伝わればいいのだが」

ようやく力が戻ってきたは杏寿郎の顔を見上げ、その頬に自分の手でそっと触れていつもしてくれているようにゆっくりと撫でた。

「どんな時も優しい笑顔で見守ってくださっているので、杏寿郎君が心穏やかに過ごせているのだと伝わっています。少しおこがましいかもしれませんが、その要因の1つに私があるのかな?と思うと身悶えるほどに嬉しいです」

少女と言うには大人びており女性と言うにはあどけなさの残る絶妙な年頃の女子となったの表情は、出会った当初とはまるで違う色香を漂わせている。

それが杏寿郎の頬を緩ませ、まだ先ほどの余韻を残した体を抱き寄せた。

「おこがましいなどある訳がない。の笑顔を毎日目にしていられるから心穏やかに過ごせているんだ。君は変わらず愛らしいな!欲云々が弾け飛ぶくらい愛らしい!だがすぐに欲が戻ってくるので困ったものだ!」

辺りに響くような溌剌とした声で愛らしいと言われても、今のには恥ずかしさより嬉しさが勝っているようで頬を赤らめながら微笑んで杏寿郎の胸に顔を埋めた。

「杏寿郎君に愛らしいと言っていただけるのがすごく嬉しくて大好きです。欲は……戻っていただかないと悲しくなるので戻してください。もう……部屋に入りませんか?」

の提案を退ける選択肢は杏寿郎にはなく、1度口付けを落として頷き露天風呂を後にした。
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