第10章 ※湯けむり旅情
「はい!ではご教授お願いいたします!その際は師範でも杏寿郎君でもなく、先生とお呼びしなくてはいけませんね」
「ふむ、つまりは弟子ではなく生徒になるわけだな!……妻であっても君に先生と呼ばれると背徳感が凄まじい」
杏寿郎の腕の力が弱まったかと思えば肩に手を当てられ、瞬く間に向かい合わせとなった。
肩から首筋をなぞる手はに心地好い刺激を与え、ピクリと身体を震わせる。
その間も手は動き続け顔を固定するように頬で止まり、クイと顔を掬い上げられた。
「生徒相手にこうも欲情してしまっては授業どころではなくなってしまう。すぐに赤くなり目を潤まされたら……何もするなと言われたとしても抑えが効かない」
額を合わせ唇が触れそうなほど近付くだけで首元まで赤く染めるに笑みを零し、いつまで目を瞑らずにいられるか眺めていると……ふとその目が柔らかく細められた。
「抑えてもらっては……悲しくなります。こうして触れていただけるのが大好きなのに。ねぇ、先生。口付けして下さい」
「なるほど……君に先生と呼ばれると、背徳感よりも欲が勝るようだ」
触れるだけの口付けを交わして顔を見合わせ微笑み会うと、どちらからともなく互いを求めるように深く口付けを交わした。