第10章 ※湯けむり旅情
夕餉は驚くほど豪華で綺麗でが食べるのを躊躇うほどだった。
付け合せの野菜も飾り切りされており、食欲よりどう作っているのかに気を取られて食事時間が長くなったほどである。
「美味かったな!あの野菜の切り方は……君は相変わらず恥ずかしがり屋だな!入っておいで、目を瞑っててやる」
そして今は部屋の露天風呂に2人で入ろうとしているのだが、が体を隠して洗い場から一向に動こうとしていない。
先に浴槽に浸かっている杏寿郎に体を見られるのが恥ずかしいらしい。
そんな姿を笑いながら見つめた後、杏寿郎は瞼を閉じてが浴槽に入りやすいようにしてやった。
「だってあまり体に自信がなくて……ありがとうございます」
コソコソいそいそと杏寿郎が目を瞑ってくれている間に浴槽に浸かり、温かさにホッと息を着いて杏寿郎の体にピタリと寄り添った。
「体が冷えているではないか……しっかり肩まで浸かりなさい。風邪を引いてしまっては旅行どころではなくなるぞ?」
隣同士で引っ付いていたの冷えた体をクルリと回して肩まで浸からせ、後ろから抱きすくめて自らの体温でも温める。
「それは悲しいです!未だに風邪を引いたことがないのでどんな感じなのか気になりますが、今は元気にたくさん杏寿郎君と楽しみたいです」